最強のカードを切った先に、日本がいた
「最強のカードを切った先に、日本がいた」
北京で、一枚の命令書が承認された。
レアアース輸出管理の大幅強化。
「アメリカ向けを止める」
習静峰の言葉に、会議室が静まり返った。
商務担当者が確認する。
「全面停止でしょうか?」
「軍民両用分野を中心に許可を厳格化する」
「日本は?」
静峰は少し考えた。
「日本も対象だ」
側近が顔を上げた。
「日本も?」
「アメリカの最大の同盟国だ」
「しかし日本企業は我が国の重要顧客でもあります」
「分かっている」
「日本には……」
そこで側近が言葉を止めた。
静峰が見る。
「何だ」
「いえ」
「言え」
「日本国内にもレアアースがあります」
静峰は無表情だった。
「知っている」
「かなりあります」
「知っている」
「世界全体に匹敵するほど」
「……知っている」
会議室が静かになった。
静峰が指を組む。
「それでも日本は中国から買っている」
「はい」
「なら止めれば、少なくとも短期的には影響がある」
理屈としては正しい。
日本企業は中国産レアアースを前提とした供給網を持っている。
突然止めれば混乱する。
在庫。
契約。
加工設備。
物流。
どれだけ資源を持っていても、明日から鉱山を百倍動かせるわけではない。
静峰は決断した。
「やれ」
翌朝。
東京。
経済産業省。
「中国から輸出許可が下りません」
担当者が資料を並べる。
「対象は?」
「ジスプロシウム、テルビウム、イットリウムなど。磁石、半導体、航空宇宙関連への影響が予想されます」
安西晋一郎が資料を見る。
「在庫は?」
「重要品目について六か月から一年程度」
「国内鉱山は?」
「増産可能です」
「どのくらい?」
「三か月以内に需要の四割」
「半年」
「七割程度」
「一年」
担当者が少し間を置いた。
「全量を賄えます」
安西が頷く。
「じゃあ急ごう」
「はい」
「中国への報復措置は?」
安西が顔を上げた。
「まだいいでしょう」
「しかし――」
「まず困らないようにする方が先」
会議はそのまま、国内増産計画へ移った。
鉱山。
海底資源。
精錬。
磁石。
リサイクル。
代替材料。
日本中の企業と研究機関へ発注が飛んだ。
世界最大の工業国家が、
「レアアースを自分で用意する」
方向へ動き始めた。
ワシントン。
「Chinaがレアアースを止めた!」
グレイヴスが机を叩いた。
「許されない!」
商務長官が頷く。
「国内メーカーへの影響が出始めています」
「備蓄は?」
「あります。しかし長期化すれば不足します」
「Australia!」
「増産を要請しています」
「Canada!」
「同じく」
「日本!」
「……」
グレイヴスが止まる。
「日本は?」
「国内増産を発表しました」
「どれくらい持ってる?」
商務長官は答えたくなさそうだった。
「言え」
「世界全体に匹敵する量です」
「……」
グレイヴスがゆっくり椅子へ座った。
「またか」
「はい」
「石油もあった」
「はい」
「天然ガスも」
「はい」
「リチウムも」
「はい」
「レアアースまで?」
「はい」
グレイヴスは天井を見た。
「日本列島の地下、どうなってるんだ?」
誰にも分からなかった。
三日後。
グレイヴスは別のことに気づいた。
「待て」
「はい」
「シンは増産するんだろ?」
「はい」
「余る?」
「日本国内需要以上に生産することも可能です」
グレイヴスの目が輝いた。
「買おう」
「日本から?」
「そうだ!」
立ち上がる。
「Chinaが売らないならJapanから買えばいい!」
「日本政府は?」
「シンなら売る!」
「まだ聞いていません」
「売る!」
なぜか確信していた。
北京。
数日後。
静峰の机に新しい報告書が置かれた。
「日本政府が、国内レアアース増産分の一部を同盟国へ供給する方針を発表しました」
静峰の動きが止まる。
「同盟国?」
「アメリカ、英国、豪州、韓国などです」
「量は?」
数字を聞く。
静峰は黙った。
「価格は?」
「市場価格を大きく崩さない水準にすると」
「……」
さらに別の資料。
日本企業が豪州の鉱山へ追加投資。
カナダ。
インド。
ベトナム。
アフリカ諸国。
日本の商社が次々と長期契約を結んでいる。
静峰が尋ねた。
「我々の輸出規制によって」
「はい」
「中国以外の供給網ができている?」
「……はい」
「日本を中心に?」
「はい」
静峰は目を閉じた。
「解除したら?」
「中国産の価格競争力は依然として高いですが、日本企業は安全保障上、以前ほど依存しないと思われます」
「……」
切ったカードは強かった。
強すぎた。
だから相手は、そのカードが二度と効かないように動き始めた。
そのころモスクワ。
ヴォルコフも報告を受けていた。
「中国がレアアースを規制しました」
「知っている」
「日本は国内増産へ」
「知っている」
「アメリカにも供給するようです」
「そうだろうな」
側近が尋ねる。
「中国は失敗したのでしょうか?」
ヴォルコフは少し考えた。
「短期的には成功だ」
「では?」
「日本企業は混乱した。アメリカも困った。価格も上がった」
「はい」
「だが」
ヴォルコフは資料を置く。
「相手に、自分なしで生きる方法を教えた」
側近が黙る。
「経済的な武器は難しい」
「なぜでしょう」
「撃てば減る」
「……」
「一度使えば、相手は次に備える」
ヴォルコフは窓の外へ目を向けた。
「だから切り札なのだ。何度も切るものではない」
またヴォルコフが格好いいことを言った。
一か月後。
東京湾。
巨大な貨物船へ、日本で精錬されたレアアース製品が積み込まれていた。
行き先。
アメリカ。
グレイヴスは中継映像をホワイトハウスで見ていた。
「よし!」
商務長官が言う。
「第一便です」
「Americaの工場は止まらない!」
「はい」
「シンはやっぱり友達だ!」
「ただし日本政府から条件があります」
グレイヴスの笑顔が止まる。
「何だ?」
「アメリカ国内の供給網整備を続けること」
「……」
「日本への恒久依存を前提としないこと」
「……」
「豪州、カナダなどとも調達先を分散すること」
グレイヴスが眉を寄せる。
「Japanから買えと言ってるんじゃないのか?」
「逆です」
「なぜだ!」
「日本政府は、一国への依存そのものが問題だと」
グレイヴスは少し黙った。
「……シンらしいな」
「はい」
「でもAmericaには多めに売るんだろ?」
「英国とほぼ同量です」
グレイヴスの顔が変わった。
「なぜだ!」
問題が変わった。
北京。
静峰は日本の輸出統計を見ていた。
中国からのレアアース輸入。
激減。
豪州。
増加。
カナダ。
増加。
国内生産。
急増。
そしてアメリカへの日本製レアアース関連素材の輸出も増えている。
側近が尋ねる。
「輸出規制を解除しますか?」
静峰はすぐには答えなかった。
「全面解除はしない」
「では?」
「民生用途の許可を増やせ」
「日本向けも?」
「同じだ」
側近が少し驚く。
「よろしいので?」
「日本を完全に失う方が悪い」
静峰は資料を見る。
「我々には価格競争力がある」
「はい」
「供給能力もある」
「はい」
「なら、武器ではなく商品として売れ」
側近が頷いた。
「分かりました」
静峰は椅子にもたれた。
今回、中国は負けたわけではない。
巨大な鉱山も。
精錬技術も。
産業基盤も残っている。
だが一つだけ変わった。
世界は、中国以外の選択肢を持った。
半年後。
国際資源会議。
安西。
静峰。
グレイヴス。
三人が同じ会場にいた。
今回は食事ではない。
グレイヴスが静峰を見る。
「もうレアアース止めるな」
静峰が答える。
「半導体規制を先にやめろ」
「それは別だ!」
「同じだ」
「違う!」
安西が資料から顔を上げる。
「二人とも」
二人が日本を見る。
「今回は一つ決めません?」
「何だ?」
「重要鉱物について、最低限の民生供給は政治対立があっても維持するルール」
静峰が腕を組む。
「中国だけに義務を負わせるのか?」
「日本も守ります」
グレイヴスが言う。
「Americaもだ」
静峰がグレイヴスを見る。
「本当に?」
「……合理的な範囲で」
「信用できんな」
「Chinaに言われたくない!」
また始まった。
安西は額を押さえた。
しかし、その日の夜までに三か国の実務者は協議開始で合意した。
首脳が喧嘩している間に、官僚たちが仕事をした。
会議終了後。
静峰が会場を出ようとすると、ヴォルコフが廊下にいた。
「どうだった?」
「面倒だった」
「そうか」
「日本は国内に資源を持ちすぎている」
「知っている」
静峰がヴォルコフを見る。
「ロシアはよく付き合えるな」
ヴォルコフは少し考えた。
「慣れた」
「……」
「日本に資源を売る時は、一つ覚えておけばいい」
「何だ」
ヴォルコフは歩き出す。
「必要だから買っていると思うな」
静峰がその背中を見る。
「では、なぜ買う?」
ヴォルコフは振り返らなかった。
「関係を切りたくないからだ」
静峰はしばらく黙っていた。
そして側近へ言う。
「日本向けの許可審査」
「はい」
「少し早くしろ」
「承知しました」
世界最強国家、日本。
中国がレアアースを止めた。
日本は困った。
アメリカも困った。
だが、日本は中国を潰そうとはしなかった。
自分で掘り。
友人から買い。
不足する国へ売り。
そして中国から再び届き始めれば、それも買った。
結果として――。
中国の切り札は以前ほど怖くなくなった。
だが、中国との貿易そのものは消えなかった。
依存しないことと、付き合わないことは違う。
それが、この世界の日本が出した答えだった。
北京で、一枚の命令書が承認された。
レアアース輸出管理の大幅強化。
「アメリカ向けを止める」
習静峰の言葉に、会議室が静まり返った。
商務担当者が確認する。
「全面停止でしょうか?」
「軍民両用分野を中心に許可を厳格化する」
「日本は?」
静峰は少し考えた。
「日本も対象だ」
側近が顔を上げた。
「日本も?」
「アメリカの最大の同盟国だ」
「しかし日本企業は我が国の重要顧客でもあります」
「分かっている」
「日本には……」
そこで側近が言葉を止めた。
静峰が見る。
「何だ」
「いえ」
「言え」
「日本国内にもレアアースがあります」
静峰は無表情だった。
「知っている」
「かなりあります」
「知っている」
「世界全体に匹敵するほど」
「……知っている」
会議室が静かになった。
静峰が指を組む。
「それでも日本は中国から買っている」
「はい」
「なら止めれば、少なくとも短期的には影響がある」
理屈としては正しい。
日本企業は中国産レアアースを前提とした供給網を持っている。
突然止めれば混乱する。
在庫。
契約。
加工設備。
物流。
どれだけ資源を持っていても、明日から鉱山を百倍動かせるわけではない。
静峰は決断した。
「やれ」
翌朝。
東京。
経済産業省。
「中国から輸出許可が下りません」
担当者が資料を並べる。
「対象は?」
「ジスプロシウム、テルビウム、イットリウムなど。磁石、半導体、航空宇宙関連への影響が予想されます」
安西晋一郎が資料を見る。
「在庫は?」
「重要品目について六か月から一年程度」
「国内鉱山は?」
「増産可能です」
「どのくらい?」
「三か月以内に需要の四割」
「半年」
「七割程度」
「一年」
担当者が少し間を置いた。
「全量を賄えます」
安西が頷く。
「じゃあ急ごう」
「はい」
「中国への報復措置は?」
安西が顔を上げた。
「まだいいでしょう」
「しかし――」
「まず困らないようにする方が先」
会議はそのまま、国内増産計画へ移った。
鉱山。
海底資源。
精錬。
磁石。
リサイクル。
代替材料。
日本中の企業と研究機関へ発注が飛んだ。
世界最大の工業国家が、
「レアアースを自分で用意する」
方向へ動き始めた。
ワシントン。
「Chinaがレアアースを止めた!」
グレイヴスが机を叩いた。
「許されない!」
商務長官が頷く。
「国内メーカーへの影響が出始めています」
「備蓄は?」
「あります。しかし長期化すれば不足します」
「Australia!」
「増産を要請しています」
「Canada!」
「同じく」
「日本!」
「……」
グレイヴスが止まる。
「日本は?」
「国内増産を発表しました」
「どれくらい持ってる?」
商務長官は答えたくなさそうだった。
「言え」
「世界全体に匹敵する量です」
「……」
グレイヴスがゆっくり椅子へ座った。
「またか」
「はい」
「石油もあった」
「はい」
「天然ガスも」
「はい」
「リチウムも」
「はい」
「レアアースまで?」
「はい」
グレイヴスは天井を見た。
「日本列島の地下、どうなってるんだ?」
誰にも分からなかった。
三日後。
グレイヴスは別のことに気づいた。
「待て」
「はい」
「シンは増産するんだろ?」
「はい」
「余る?」
「日本国内需要以上に生産することも可能です」
グレイヴスの目が輝いた。
「買おう」
「日本から?」
「そうだ!」
立ち上がる。
「Chinaが売らないならJapanから買えばいい!」
「日本政府は?」
「シンなら売る!」
「まだ聞いていません」
「売る!」
なぜか確信していた。
北京。
数日後。
静峰の机に新しい報告書が置かれた。
「日本政府が、国内レアアース増産分の一部を同盟国へ供給する方針を発表しました」
静峰の動きが止まる。
「同盟国?」
「アメリカ、英国、豪州、韓国などです」
「量は?」
数字を聞く。
静峰は黙った。
「価格は?」
「市場価格を大きく崩さない水準にすると」
「……」
さらに別の資料。
日本企業が豪州の鉱山へ追加投資。
カナダ。
インド。
ベトナム。
アフリカ諸国。
日本の商社が次々と長期契約を結んでいる。
静峰が尋ねた。
「我々の輸出規制によって」
「はい」
「中国以外の供給網ができている?」
「……はい」
「日本を中心に?」
「はい」
静峰は目を閉じた。
「解除したら?」
「中国産の価格競争力は依然として高いですが、日本企業は安全保障上、以前ほど依存しないと思われます」
「……」
切ったカードは強かった。
強すぎた。
だから相手は、そのカードが二度と効かないように動き始めた。
そのころモスクワ。
ヴォルコフも報告を受けていた。
「中国がレアアースを規制しました」
「知っている」
「日本は国内増産へ」
「知っている」
「アメリカにも供給するようです」
「そうだろうな」
側近が尋ねる。
「中国は失敗したのでしょうか?」
ヴォルコフは少し考えた。
「短期的には成功だ」
「では?」
「日本企業は混乱した。アメリカも困った。価格も上がった」
「はい」
「だが」
ヴォルコフは資料を置く。
「相手に、自分なしで生きる方法を教えた」
側近が黙る。
「経済的な武器は難しい」
「なぜでしょう」
「撃てば減る」
「……」
「一度使えば、相手は次に備える」
ヴォルコフは窓の外へ目を向けた。
「だから切り札なのだ。何度も切るものではない」
またヴォルコフが格好いいことを言った。
一か月後。
東京湾。
巨大な貨物船へ、日本で精錬されたレアアース製品が積み込まれていた。
行き先。
アメリカ。
グレイヴスは中継映像をホワイトハウスで見ていた。
「よし!」
商務長官が言う。
「第一便です」
「Americaの工場は止まらない!」
「はい」
「シンはやっぱり友達だ!」
「ただし日本政府から条件があります」
グレイヴスの笑顔が止まる。
「何だ?」
「アメリカ国内の供給網整備を続けること」
「……」
「日本への恒久依存を前提としないこと」
「……」
「豪州、カナダなどとも調達先を分散すること」
グレイヴスが眉を寄せる。
「Japanから買えと言ってるんじゃないのか?」
「逆です」
「なぜだ!」
「日本政府は、一国への依存そのものが問題だと」
グレイヴスは少し黙った。
「……シンらしいな」
「はい」
「でもAmericaには多めに売るんだろ?」
「英国とほぼ同量です」
グレイヴスの顔が変わった。
「なぜだ!」
問題が変わった。
北京。
静峰は日本の輸出統計を見ていた。
中国からのレアアース輸入。
激減。
豪州。
増加。
カナダ。
増加。
国内生産。
急増。
そしてアメリカへの日本製レアアース関連素材の輸出も増えている。
側近が尋ねる。
「輸出規制を解除しますか?」
静峰はすぐには答えなかった。
「全面解除はしない」
「では?」
「民生用途の許可を増やせ」
「日本向けも?」
「同じだ」
側近が少し驚く。
「よろしいので?」
「日本を完全に失う方が悪い」
静峰は資料を見る。
「我々には価格競争力がある」
「はい」
「供給能力もある」
「はい」
「なら、武器ではなく商品として売れ」
側近が頷いた。
「分かりました」
静峰は椅子にもたれた。
今回、中国は負けたわけではない。
巨大な鉱山も。
精錬技術も。
産業基盤も残っている。
だが一つだけ変わった。
世界は、中国以外の選択肢を持った。
半年後。
国際資源会議。
安西。
静峰。
グレイヴス。
三人が同じ会場にいた。
今回は食事ではない。
グレイヴスが静峰を見る。
「もうレアアース止めるな」
静峰が答える。
「半導体規制を先にやめろ」
「それは別だ!」
「同じだ」
「違う!」
安西が資料から顔を上げる。
「二人とも」
二人が日本を見る。
「今回は一つ決めません?」
「何だ?」
「重要鉱物について、最低限の民生供給は政治対立があっても維持するルール」
静峰が腕を組む。
「中国だけに義務を負わせるのか?」
「日本も守ります」
グレイヴスが言う。
「Americaもだ」
静峰がグレイヴスを見る。
「本当に?」
「……合理的な範囲で」
「信用できんな」
「Chinaに言われたくない!」
また始まった。
安西は額を押さえた。
しかし、その日の夜までに三か国の実務者は協議開始で合意した。
首脳が喧嘩している間に、官僚たちが仕事をした。
会議終了後。
静峰が会場を出ようとすると、ヴォルコフが廊下にいた。
「どうだった?」
「面倒だった」
「そうか」
「日本は国内に資源を持ちすぎている」
「知っている」
静峰がヴォルコフを見る。
「ロシアはよく付き合えるな」
ヴォルコフは少し考えた。
「慣れた」
「……」
「日本に資源を売る時は、一つ覚えておけばいい」
「何だ」
ヴォルコフは歩き出す。
「必要だから買っていると思うな」
静峰がその背中を見る。
「では、なぜ買う?」
ヴォルコフは振り返らなかった。
「関係を切りたくないからだ」
静峰はしばらく黙っていた。
そして側近へ言う。
「日本向けの許可審査」
「はい」
「少し早くしろ」
「承知しました」
世界最強国家、日本。
中国がレアアースを止めた。
日本は困った。
アメリカも困った。
だが、日本は中国を潰そうとはしなかった。
自分で掘り。
友人から買い。
不足する国へ売り。
そして中国から再び届き始めれば、それも買った。
結果として――。
中国の切り札は以前ほど怖くなくなった。
だが、中国との貿易そのものは消えなかった。
依存しないことと、付き合わないことは違う。
それが、この世界の日本が出した答えだった。