日米同盟は、必要ですか?
「日米同盟は、必要ですか?」
チート日本シリーズ・共通設定
舞台は現代。
日本だけが異常な発展を遂げている。
人口約六億、国土は現実の約五倍。
GDPと軍事力はアメリカの約十倍。
円は世界の基軸通貨。
世界最大の工業・科学技術大国であり、世界全体に匹敵する資源を持つ。
核攻撃さえ完全に防御できる。
さらに日本は、アメリカの約二倍にあたる数の同盟国を持つ。
それでも日本外交には、昔から変わらない言葉があった。
「日米同盟は、日本外交・安全保障の基軸である」
その日。
国会で、一人の議員が質問した。
「総理」
安西晋一郎が顔を上げる。
「現在の日本に、日米同盟は本当に必要なのでしょうか」
議場がざわついた。
質問したのは野党議員だった。
「日本の軍事力はアメリカを遥かに上回っています」
「はい」
「核攻撃も防御できる」
「はい」
「資源も自給できます」
「できます」
「日本の同盟国数もアメリカを上回っています」
「そうですね」
議員が資料を掲げる。
「では、アメリカに日本を守ってもらう必要がありますか?」
安西は少し考えた。
「ありません」
議場が一気に騒がしくなった。
記者席でも人が動く。
議員自身も少し驚いていた。
「……では、日米同盟は不要なのでは?」
安西は首を横に振る。
「それは違います」
「なぜです?」
「同盟って、弱い国が強い国に守ってもらうためだけにあるものじゃないでしょう」
議場が静かになる。
「日本がアメリカを必要とすることもある。アメリカが日本を必要とすることもある」
安西は続けた。
「だから日米同盟があります」
その日のニュースは、この答弁一色になった。
ただし――。
見出しは少し違った。
『安西首相「米国に守ってもらう必要はない」』
そこだけ切り取られた。
ワシントン。
「WHAT!?」
グレイヴスが新聞を机へ叩きつけた。
「シンがAmericaはいらないと言った!」
国家安全保障担当補佐官が訂正する。
「言っていません」
「ここに書いてある!」
「『アメリカに日本を守ってもらう必要はない』です」
「同じだ!」
「かなり違います」
グレイヴスは記事を読む。
その下には安西の続きも載っている。
『日米同盟は必要』
「……」
グレイヴスの表情が少し戻った。
「必要って言ってるな」
「はい」
「重要とも?」
「はい」
「基軸?」
「そこも維持すると」
「そうか」
グレイヴスは椅子へ座った。
五秒後。
また立った。
「でも『守ってもらう必要はない』って言った!」
そこは引っかかるらしい。
しかし問題は、安西の発言ではなかった。
日本国内で始まった議論だった。
テレビ討論。
「日米同盟を現在の形で維持する必要があるのか?」
大学教授が答える。
「再定義は必要でしょう」
元外交官。
「日本が一方的に保護される構造では、すでにありません」
若い評論家。
「むしろ現在は、日本がアメリカの安全保障を支えている面も大きい」
さらに世論調査。
日米同盟を現在のまま維持 34%
より対等な形へ再編 51%
解消を検討 11%
その他 4%。
日本国民の多数は、アメリカとの関係を壊したいわけではない。
ただ、
「昔と同じ形である必要はない」
と思い始めていた。
その数字はワシントンにも届いた。
グレイヴスが固まった。
「34?」
「現状維持については」
「51は?」
「再編です」
「11!」
「同盟解消を検討」
グレイヴスが立ち上がる。
「誰だ、その11%!」
「日本国民です」
「シンに説得させろ!」
「世論を?」
「そうだ!」
「民主国家です」
「知ってる!」
最近それを言われることが増えた。
アメリカ議会でも危機感が広がった。
与党。
野党。
軍。
企業。
意見は違う。
だが一つだけ一致した。
日本を失うのはまずい。
アメリカ軍幹部が議会で証言する。
「日本との同盟が失われれば、インド太平洋における米軍の戦略は根本から再構築する必要があります」
企業側も続く。
「日米経済関係への影響は安全保障だけではありません」
日本市場。
日本製半導体。
日本のAI。
日本の金融市場。
円決済。
共同研究。
宇宙。
エネルギー。
日米関係は、軍事同盟だけではなくなっていた。
北京。
静峰は世論調査を見ていた。
「日本が日米同盟を破棄する可能性は?」
側近が答える。
「低いと思われます」
「私もそう思う」
「中国としては歓迎すべきでしょうか」
静峰は少し考える。
「単純ではない」
「なぜでしょう」
「日米同盟がなくなれば、アメリカの影響力は落ちる」
「はい」
「だが、日本は弱くならない」
側近が黙った。
そこが問題だった。
昔なら、
日米同盟消滅=日本の安全保障低下。
今は違う。
日米同盟消滅=
日本単独の安全保障政策が始まる。
しかも世界最強軍事国家。
静峰は眉間を押さえた。
「今のままでいい」
「日米同盟が?」
「そうだ」
中国まで維持派だった。
モスクワ。
「日米同盟が揺らいでいます」
側近の報告に、ヴォルコフは資料を読む。
「破棄するのか?」
「その可能性は低いと」
「なら騒ぐな」
「しかしロシアにとっては好機では?」
「何の?」
「日米分断です」
「分断してどうする」
「日本をロシア側へ――」
ヴォルコフが手を上げた。
「日本は日本側だ」
側近が黙った。
「アメリカから離れればロシアへ来る、という発想を捨てろ」
「……」
「六十以上の同盟国を持つ国だぞ」
ヴォルコフは資料を置いた。
「むしろ自由に動かれる方が面倒だ」
やはり現実的だった。
ロンドン。
ハリントンはニュースを読み終えると、側近に尋ねた。
「日米同盟がなくなった場合、英国への影響は?」
「日本との安全保障協力がさらに重要になるでしょう」
「そうだな」
「日本側へ接触しますか?」
ハリントンは紅茶を飲む。
「しない」
側近が驚いた。
「なぜ?」
「今やったら、グレイヴスが発狂する」
判断基準がおかしかった。
「それに」
ハリントンは続ける。
「友人が夫婦喧嘩している時に、片方へ結婚を申し込むような真似はしない」
「同盟は結婚ではありません」
「グレイヴスに言ってやれ」
数週間後。
日米安全保障協議。
東京。
今回は安西とグレイヴスだけではない。
外相。
防衛相。
国務長官。
国防長官。
制服組。
専門家。
双方の代表団が向かい合った。
グレイヴスは珍しく、最初から騒がなかった。
「シン」
「はい」
「Americaは日本との同盟を維持したい」
安西が頷く。
「日本もです」
「なら終わりだ」
グレイヴスが立とうとする。
国務長官が袖を引っ張った。
「まだです」
「なぜだ」
「再編交渉です」
「……そうだった」
座り直した。
日本側が提案したのは、同盟破棄ではなかった。
日米同盟の再定義。
日本防衛を中心とした旧来型の枠組みから、
日米双方が対等に互いの安全を支える同盟へ。
基地協定の見直し。
共同指揮制度の再設計。
宇宙・サイバー防衛の統合。
共同技術開発。
第三国防衛での役割分担。
そして最大の変更。
「日本防衛のための米軍駐留」
という考え方を終わらせる。
グレイヴスが資料を読む。
「米軍を追い出すのか?」
「違います」
安西が答える。
「必要な基地は残します」
「なら?」
「日本を守るためだけにいる、という建前をやめるんです」
グレイヴスが黙った。
「日本とアメリカが、一緒に地域の安定を守るために置く」
「対等?」
「対等です」
グレイヴスは少し考える。
「Americaが下になるわけじゃない?」
「なりませんよ」
「Japanも下じゃない?」
「なりません」
「50・50?」
「そんな感じです」
グレイヴスが資料を閉じた。
「悪くない」
国務長官が驚いて彼を見る。
思ったより早かった。
ただし、一つだけ揉めた。
共同声明。
日本側案。
「日米両国は、対等なパートナーとして同盟を新たな段階へ発展させる」
グレイヴスが読む。
「弱い」
安西が尋ねる。
「何が?」
「もっと強い言葉がいる」
「例えば?」
グレイヴスがペンを取る。
「日米同盟は世界で最も強固な同盟である」
安西が苦笑する。
「他の同盟国が困りますよ」
「事実だ!」
「英国が何か言いますよ」
グレイヴスの目が細くなる。
「なら絶対入れる」
「言わなきゃよかった」
翌日。
新しい日米共同声明が発表された。
日米同盟は存続。
ただし、その意味は変わった。
守る国と、守られる国。
ではない。
互いを守る二つの国。
日本国内の世論調査。
同盟維持・新体制を支持。
78%。
解消支持。
8%。
グレイヴスは数字を見て満足そうに頷いた。
「11から8になった」
側近が答える。
「はい」
「三ポイント取り戻した」
「大統領の選挙ではありません」
「勝ちは勝ちだ」
数日後。
ホワイトハウス。
グレイヴスの机には、新しい日米同盟文書が置かれていた。
その横には一枚の写真。
東京で安西と握手している写真だった。
側近が尋ねる。
「大統領」
「なんだ」
「今回、本当に日米同盟がなくなると思いました?」
グレイヴスは少し黙った。
「思ってない」
「そうですか」
「Americaを捨てるわけないだろ」
「なるほど」
「ただ」
「はい」
グレイヴスは写真を見る。
「……少しだけ心配した」
側近は笑わなかった。
珍しく、この男が本当のことを言った気がしたからだ。
東京。
安西も記者会見で同じような質問を受けていた。
「総理、日本はアメリカなしでも安全保障を維持できますか?」
「できます」
会場がざわつく。
安西は続けた。
「でも、それはアメリカが必要ないという意味ではありません」
「なぜでしょう」
安西は少し考える。
「一人でも生きられるから、友達はいらない」
そして笑った。
「そんな話にはならないでしょう」
世界最強国家、日本。
もうアメリカに守ってもらう必要はなかった。
アメリカの市場がなければ生きられない国でもない。
ドルも必要ない。
資源も必要ない。
それでも日本は、日米同盟を選んだ。
必要だから仕方なく結ぶ同盟ではない。
離れる自由を持った二つの国が、それでも一緒にいることを選んだ同盟。
その日。
日米同盟は少しだけ揺れた。
そして――。
揺れたからこそ、以前より強くなった。
チート日本シリーズ・共通設定
舞台は現代。
日本だけが異常な発展を遂げている。
人口約六億、国土は現実の約五倍。
GDPと軍事力はアメリカの約十倍。
円は世界の基軸通貨。
世界最大の工業・科学技術大国であり、世界全体に匹敵する資源を持つ。
核攻撃さえ完全に防御できる。
さらに日本は、アメリカの約二倍にあたる数の同盟国を持つ。
それでも日本外交には、昔から変わらない言葉があった。
「日米同盟は、日本外交・安全保障の基軸である」
その日。
国会で、一人の議員が質問した。
「総理」
安西晋一郎が顔を上げる。
「現在の日本に、日米同盟は本当に必要なのでしょうか」
議場がざわついた。
質問したのは野党議員だった。
「日本の軍事力はアメリカを遥かに上回っています」
「はい」
「核攻撃も防御できる」
「はい」
「資源も自給できます」
「できます」
「日本の同盟国数もアメリカを上回っています」
「そうですね」
議員が資料を掲げる。
「では、アメリカに日本を守ってもらう必要がありますか?」
安西は少し考えた。
「ありません」
議場が一気に騒がしくなった。
記者席でも人が動く。
議員自身も少し驚いていた。
「……では、日米同盟は不要なのでは?」
安西は首を横に振る。
「それは違います」
「なぜです?」
「同盟って、弱い国が強い国に守ってもらうためだけにあるものじゃないでしょう」
議場が静かになる。
「日本がアメリカを必要とすることもある。アメリカが日本を必要とすることもある」
安西は続けた。
「だから日米同盟があります」
その日のニュースは、この答弁一色になった。
ただし――。
見出しは少し違った。
『安西首相「米国に守ってもらう必要はない」』
そこだけ切り取られた。
ワシントン。
「WHAT!?」
グレイヴスが新聞を机へ叩きつけた。
「シンがAmericaはいらないと言った!」
国家安全保障担当補佐官が訂正する。
「言っていません」
「ここに書いてある!」
「『アメリカに日本を守ってもらう必要はない』です」
「同じだ!」
「かなり違います」
グレイヴスは記事を読む。
その下には安西の続きも載っている。
『日米同盟は必要』
「……」
グレイヴスの表情が少し戻った。
「必要って言ってるな」
「はい」
「重要とも?」
「はい」
「基軸?」
「そこも維持すると」
「そうか」
グレイヴスは椅子へ座った。
五秒後。
また立った。
「でも『守ってもらう必要はない』って言った!」
そこは引っかかるらしい。
しかし問題は、安西の発言ではなかった。
日本国内で始まった議論だった。
テレビ討論。
「日米同盟を現在の形で維持する必要があるのか?」
大学教授が答える。
「再定義は必要でしょう」
元外交官。
「日本が一方的に保護される構造では、すでにありません」
若い評論家。
「むしろ現在は、日本がアメリカの安全保障を支えている面も大きい」
さらに世論調査。
日米同盟を現在のまま維持 34%
より対等な形へ再編 51%
解消を検討 11%
その他 4%。
日本国民の多数は、アメリカとの関係を壊したいわけではない。
ただ、
「昔と同じ形である必要はない」
と思い始めていた。
その数字はワシントンにも届いた。
グレイヴスが固まった。
「34?」
「現状維持については」
「51は?」
「再編です」
「11!」
「同盟解消を検討」
グレイヴスが立ち上がる。
「誰だ、その11%!」
「日本国民です」
「シンに説得させろ!」
「世論を?」
「そうだ!」
「民主国家です」
「知ってる!」
最近それを言われることが増えた。
アメリカ議会でも危機感が広がった。
与党。
野党。
軍。
企業。
意見は違う。
だが一つだけ一致した。
日本を失うのはまずい。
アメリカ軍幹部が議会で証言する。
「日本との同盟が失われれば、インド太平洋における米軍の戦略は根本から再構築する必要があります」
企業側も続く。
「日米経済関係への影響は安全保障だけではありません」
日本市場。
日本製半導体。
日本のAI。
日本の金融市場。
円決済。
共同研究。
宇宙。
エネルギー。
日米関係は、軍事同盟だけではなくなっていた。
北京。
静峰は世論調査を見ていた。
「日本が日米同盟を破棄する可能性は?」
側近が答える。
「低いと思われます」
「私もそう思う」
「中国としては歓迎すべきでしょうか」
静峰は少し考える。
「単純ではない」
「なぜでしょう」
「日米同盟がなくなれば、アメリカの影響力は落ちる」
「はい」
「だが、日本は弱くならない」
側近が黙った。
そこが問題だった。
昔なら、
日米同盟消滅=日本の安全保障低下。
今は違う。
日米同盟消滅=
日本単独の安全保障政策が始まる。
しかも世界最強軍事国家。
静峰は眉間を押さえた。
「今のままでいい」
「日米同盟が?」
「そうだ」
中国まで維持派だった。
モスクワ。
「日米同盟が揺らいでいます」
側近の報告に、ヴォルコフは資料を読む。
「破棄するのか?」
「その可能性は低いと」
「なら騒ぐな」
「しかしロシアにとっては好機では?」
「何の?」
「日米分断です」
「分断してどうする」
「日本をロシア側へ――」
ヴォルコフが手を上げた。
「日本は日本側だ」
側近が黙った。
「アメリカから離れればロシアへ来る、という発想を捨てろ」
「……」
「六十以上の同盟国を持つ国だぞ」
ヴォルコフは資料を置いた。
「むしろ自由に動かれる方が面倒だ」
やはり現実的だった。
ロンドン。
ハリントンはニュースを読み終えると、側近に尋ねた。
「日米同盟がなくなった場合、英国への影響は?」
「日本との安全保障協力がさらに重要になるでしょう」
「そうだな」
「日本側へ接触しますか?」
ハリントンは紅茶を飲む。
「しない」
側近が驚いた。
「なぜ?」
「今やったら、グレイヴスが発狂する」
判断基準がおかしかった。
「それに」
ハリントンは続ける。
「友人が夫婦喧嘩している時に、片方へ結婚を申し込むような真似はしない」
「同盟は結婚ではありません」
「グレイヴスに言ってやれ」
数週間後。
日米安全保障協議。
東京。
今回は安西とグレイヴスだけではない。
外相。
防衛相。
国務長官。
国防長官。
制服組。
専門家。
双方の代表団が向かい合った。
グレイヴスは珍しく、最初から騒がなかった。
「シン」
「はい」
「Americaは日本との同盟を維持したい」
安西が頷く。
「日本もです」
「なら終わりだ」
グレイヴスが立とうとする。
国務長官が袖を引っ張った。
「まだです」
「なぜだ」
「再編交渉です」
「……そうだった」
座り直した。
日本側が提案したのは、同盟破棄ではなかった。
日米同盟の再定義。
日本防衛を中心とした旧来型の枠組みから、
日米双方が対等に互いの安全を支える同盟へ。
基地協定の見直し。
共同指揮制度の再設計。
宇宙・サイバー防衛の統合。
共同技術開発。
第三国防衛での役割分担。
そして最大の変更。
「日本防衛のための米軍駐留」
という考え方を終わらせる。
グレイヴスが資料を読む。
「米軍を追い出すのか?」
「違います」
安西が答える。
「必要な基地は残します」
「なら?」
「日本を守るためだけにいる、という建前をやめるんです」
グレイヴスが黙った。
「日本とアメリカが、一緒に地域の安定を守るために置く」
「対等?」
「対等です」
グレイヴスは少し考える。
「Americaが下になるわけじゃない?」
「なりませんよ」
「Japanも下じゃない?」
「なりません」
「50・50?」
「そんな感じです」
グレイヴスが資料を閉じた。
「悪くない」
国務長官が驚いて彼を見る。
思ったより早かった。
ただし、一つだけ揉めた。
共同声明。
日本側案。
「日米両国は、対等なパートナーとして同盟を新たな段階へ発展させる」
グレイヴスが読む。
「弱い」
安西が尋ねる。
「何が?」
「もっと強い言葉がいる」
「例えば?」
グレイヴスがペンを取る。
「日米同盟は世界で最も強固な同盟である」
安西が苦笑する。
「他の同盟国が困りますよ」
「事実だ!」
「英国が何か言いますよ」
グレイヴスの目が細くなる。
「なら絶対入れる」
「言わなきゃよかった」
翌日。
新しい日米共同声明が発表された。
日米同盟は存続。
ただし、その意味は変わった。
守る国と、守られる国。
ではない。
互いを守る二つの国。
日本国内の世論調査。
同盟維持・新体制を支持。
78%。
解消支持。
8%。
グレイヴスは数字を見て満足そうに頷いた。
「11から8になった」
側近が答える。
「はい」
「三ポイント取り戻した」
「大統領の選挙ではありません」
「勝ちは勝ちだ」
数日後。
ホワイトハウス。
グレイヴスの机には、新しい日米同盟文書が置かれていた。
その横には一枚の写真。
東京で安西と握手している写真だった。
側近が尋ねる。
「大統領」
「なんだ」
「今回、本当に日米同盟がなくなると思いました?」
グレイヴスは少し黙った。
「思ってない」
「そうですか」
「Americaを捨てるわけないだろ」
「なるほど」
「ただ」
「はい」
グレイヴスは写真を見る。
「……少しだけ心配した」
側近は笑わなかった。
珍しく、この男が本当のことを言った気がしたからだ。
東京。
安西も記者会見で同じような質問を受けていた。
「総理、日本はアメリカなしでも安全保障を維持できますか?」
「できます」
会場がざわつく。
安西は続けた。
「でも、それはアメリカが必要ないという意味ではありません」
「なぜでしょう」
安西は少し考える。
「一人でも生きられるから、友達はいらない」
そして笑った。
「そんな話にはならないでしょう」
世界最強国家、日本。
もうアメリカに守ってもらう必要はなかった。
アメリカの市場がなければ生きられない国でもない。
ドルも必要ない。
資源も必要ない。
それでも日本は、日米同盟を選んだ。
必要だから仕方なく結ぶ同盟ではない。
離れる自由を持った二つの国が、それでも一緒にいることを選んだ同盟。
その日。
日米同盟は少しだけ揺れた。
そして――。
揺れたからこそ、以前より強くなった。