ラブイズマネー
不思議な店を見つけた。
いつもと同じ会社の帰り道を歩いていたら、何屋だか分からない店があったのだ。昨日までは確かになかった。
おれは気になり、その中に入ることにする。
嫌いな上司に小言を言われたことの憂さを晴らしたいという気持ちも手伝ったのかもしれない。
「いらっしゃーい」
若い女の声が聞こえてきた。カウンターを見ると美しい女が座っていた。
周りを見回しても、売り物は無い。どんなに美しい女がいようとも、これでは商売にならないのではないだろうか。
「お客さん、売るの買うの?」
「ここは何屋なんですか?」
「ここは愛を扱う店よ。知らないで入ったの?」
女が言うには、ここは自分が人や物に与えている愛情を売ることができるらしいのだ。
大体の買い取りの価格を聞いてみると、とんでもない額であった。おれはすぐに愛を売ることを決意する。
まずは、実験的に本当に必要のない愛を売ることにする。
「おれの上司への愛を売るよ」
おれがそう言うと、女は目を瞑り、何か呟き始める。
「うーん。あなた上司のことを愛してないでしょう。そういうのはダメ」
女は何かを感じ取ったようにそう言った。当然といえば、当然である。おれは頭を掻きながら別の愛を売ることにする。
「最近飼いはじめた犬の愛を売るよ。かわいい犬なんだ」
女は再び目を瞑り、何か呟き始める。
「うーん。それなら、百万ってところね」
おれが喜んで了承すると、女は瓶を持ってきて、それのふたを開ける。
おれは何かが吸い込まれたような感覚を感じる。そして、自分の犬がさほど可愛く思えなくなった。
どうやら、それで売買は成立したようだ。
おれは更に様々なものを売ることにする。
好きなスポーツの愛情、熱を入れている女への愛情、好きな番組への愛情。
色々な愛情を売ったことで、合計金額は五千万ほどになっていた。
もう、売れる愛情が無くなると、おれは支払いをお願いする。
女は小切手を渡してくる。確かにそこには五千万と書き込まれていた。
「こんな金額で愛情を買って、商売になるのかい?」
「商売にならないならば、潰れてるわ」
おれはその言葉に納得する。どうやら、こんなおれの愛でも買ってくれるやつがいるようだ。
女の話によると、愛を買った人間をおれは売った分だけ愛することになるようなのだ。
要するに美人であるならば、運がいいというわけだ。
金と女、どっちも手に入ることになれば、どんなに幸運だろうか。
翌日、会社に行くとあの嫌いな上司に妙に会いたくなった。
噂によるとあの上司は、以前からおれのことが…。
小言もおれに会うための口実だったのか…。
いつもと同じ会社の帰り道を歩いていたら、何屋だか分からない店があったのだ。昨日までは確かになかった。
おれは気になり、その中に入ることにする。
嫌いな上司に小言を言われたことの憂さを晴らしたいという気持ちも手伝ったのかもしれない。
「いらっしゃーい」
若い女の声が聞こえてきた。カウンターを見ると美しい女が座っていた。
周りを見回しても、売り物は無い。どんなに美しい女がいようとも、これでは商売にならないのではないだろうか。
「お客さん、売るの買うの?」
「ここは何屋なんですか?」
「ここは愛を扱う店よ。知らないで入ったの?」
女が言うには、ここは自分が人や物に与えている愛情を売ることができるらしいのだ。
大体の買い取りの価格を聞いてみると、とんでもない額であった。おれはすぐに愛を売ることを決意する。
まずは、実験的に本当に必要のない愛を売ることにする。
「おれの上司への愛を売るよ」
おれがそう言うと、女は目を瞑り、何か呟き始める。
「うーん。あなた上司のことを愛してないでしょう。そういうのはダメ」
女は何かを感じ取ったようにそう言った。当然といえば、当然である。おれは頭を掻きながら別の愛を売ることにする。
「最近飼いはじめた犬の愛を売るよ。かわいい犬なんだ」
女は再び目を瞑り、何か呟き始める。
「うーん。それなら、百万ってところね」
おれが喜んで了承すると、女は瓶を持ってきて、それのふたを開ける。
おれは何かが吸い込まれたような感覚を感じる。そして、自分の犬がさほど可愛く思えなくなった。
どうやら、それで売買は成立したようだ。
おれは更に様々なものを売ることにする。
好きなスポーツの愛情、熱を入れている女への愛情、好きな番組への愛情。
色々な愛情を売ったことで、合計金額は五千万ほどになっていた。
もう、売れる愛情が無くなると、おれは支払いをお願いする。
女は小切手を渡してくる。確かにそこには五千万と書き込まれていた。
「こんな金額で愛情を買って、商売になるのかい?」
「商売にならないならば、潰れてるわ」
おれはその言葉に納得する。どうやら、こんなおれの愛でも買ってくれるやつがいるようだ。
女の話によると、愛を買った人間をおれは売った分だけ愛することになるようなのだ。
要するに美人であるならば、運がいいというわけだ。
金と女、どっちも手に入ることになれば、どんなに幸運だろうか。
翌日、会社に行くとあの嫌いな上司に妙に会いたくなった。
噂によるとあの上司は、以前からおれのことが…。
小言もおれに会うための口実だったのか…。