シール一枚、二十年分
「大人が本気でシール交換したら、子どもには勝てないよ」
小学三年生の姪、結菜にそう言われた時、二十六歳の小川茉莉は鼻で笑った。
「シールを交換するだけでしょ?」
「ただ交換するんじゃないの。レートがあるの」
「レート?」
「ぷっくりシール一枚は、普通のシール三枚。キラキラなら二枚。人気キャラは相手による」
結菜は、分厚いシール帳を机へ置いた。
ページを開くたび、動物、食べ物、宝石、海の生き物が現れる。透明なもの、振ると中の粒が動くもの、触ると柔らかいものまであった。
「今のシール、進化しすぎじゃない?」
茉莉が感心していると、結菜は得意げに胸を張った。
「今日、ショッピングモールで交換会があるの。一緒に来て」
「見てるだけならいいよ」
「茉莉ちゃんも参加するんだよ」
「私、シール持ってないけど」
結菜は、部屋の隅に置かれた古い段ボール箱を指さした。
前日に実家の物置から出てきた、茉莉の子ども時代の荷物だった。
中には、色あせた文房具、交換日記、折れた定規、そして小学生の頃に使っていたシール帳が入っている。
表紙には、銀色の文字で大きく書かれていた。
『まつりの最強シールコレクション』
「最強って……」
二十年前の自分へ言いたい。
将来、親戚の前で発掘される可能性を考えて物へ名前をつけろ、と。
結菜は目を輝かせ、古いシール帳を開いた。
「すごい! これ、今は売ってないやつだよ!」
「そんなに珍しいの?」
「ヴィンテージ!」
「シールにもヴィンテージってあるんだ」
一ページ目には、ぷっくりした果物。
二ページ目には、銀色の恐竜。
三ページ目には、香りが完全に消えた香りつきシール。
どれも懐かしかった。
ページをめくるたび、休み時間の教室が頭へ浮かぶ。
机を囲み、互いのシール帳を見せ合った。
「これ欲しい」
「それはお気に入りだから駄目」
「じゃあ、これ二枚」
「もう一枚つけて」
小学生とは思えない交渉をしていた。
「昔もレートあったよ」
茉莉が言うと、結菜は頷いた。
「シール交換は遊びじゃないから」
「そこまで言う?」
最後のページを開いた時、茉莉の手が止まった。
中央に、一枚だけ空白があった。
その周りを、青いペンで何度も囲んでいる。
下には、子どもの字でこう書かれていた。
『月のイルカ。ぜったいにゆるさない』
「何を許さなかったの?」
結菜が尋ねる。
茉莉は、ぼんやりと昔の記憶を思い出した。
月を背景に、二頭のイルカが跳ねている大きなシール。
当時、一番大切にしていた。
ところがある日、突然なくなった。
茉莉は、親友だった紗英が持っていったと思い込んだ。
その前日に、紗英が何度も交換してほしいと言っていたからだ。
「返してよ」
「取ってないよ」
「嘘つき」
ひどい言葉を言った。
紗英は泣いた。
それから二人は口をきかなくなり、仲直りできないまま、紗英は父親の転勤で引っ越した。
「私、友達を泥棒扱いしちゃったんだ」
「本当に取ったの?」
「分からない。でも、たぶん取ってない」
「どうして?」
「紗英は、そういうことをする子じゃなかったから」
大人になってから何度も思い出した。
謝りたかった。
けれど、連絡先は分からない。
名前を検索したこともあったが、同姓同名が多く、見つけられなかった。
結菜は空白のページを見つめた。
「じゃあ、今日探そう」
「何を?」
「月のイルカ」
「二十年前のシールを?」
「交換会には、すごい人が来るから」
子どもの言う「すごい人」を、茉莉はあまり信用していなかった。
ところが会場へ着くと、その考えは変わった。
モールのイベントスペースには、数十人の子どもたちが集まっていた。
テーブルの上には、色とりどりのシール帳。
保護者たちは少し離れた場所から見守っているが、子どもたちの表情は真剣だった。
「そのウサギ、交換できる?」
「これは駄目」
「じゃあ、プリンと透明なクマ」
「もう一枚」
「星ならつける」
商談だった。
会社の会議より話が早い。
結菜もすぐに輪へ入り、交渉を始めた。
茉莉は古いシール帳を抱え、近くの椅子へ座った。
参加する気はなかった。
しかし、一人の女の子が茉莉のシール帳を覗き込んだ。
「その銀色の恐竜、欲しい」
「これ?」
「この猫三枚と交換して」
差し出されたのは、毛並みまで細かく描かれた立体的な猫のシールだった。
かわいい。
かなりかわいい。
「でも恐竜一枚に、猫三枚は多くない?」
「ヴィンテージだから」
結菜と同じ言葉だった。
「じゃあ、交換成立」
十分後。
茉莉は完全に参加者になっていた。
「このクリームソーダ、交換できる?」
「キラキラの鳥なら」
「鳥一枚だけ?」
「じゃあ、小さいドーナツもつけます」
「成立」
楽しい。
想像以上に楽しい。
仕事では、予算や納期や責任がついて回る。
シール交換では、かわいいかどうかだけを真剣に考えればいい。
気づけば茉莉は、二十六歳とは思えない速度でページをめくっていた。
その時だった。
「懐かしいシール帳」
背後から女性の声がした。
振り返る。
同じくらいの年齢の女性が、小さな女の子と手をつないで立っていた。
肩までの髪。
少し垂れた目。
左の眉の上にある、小さなほくろ。
「……紗英?」
女性も目を見開いた。
「茉莉?」
二人の間に、二十年分の沈黙が落ちた。
先に口を開いたのは、紗英だった。
「まだ、そのシール帳持ってたんだ」
「うん」
「『最強シールコレクション』」
「そこは読まないで」
「表紙に大きく書いてあるから」
昔と同じ笑い方だった。
それだけで、胸の奥が苦しくなる。
茉莉はシール帳を開き、最後のページを見せた。
「紗英。あの時、ごめん」
紗英は空白と、その下の文字を見た。
『ぜったいにゆるさない』
「かなり怒ってたね」
「消しておけばよかった」
「今からでも消す?」
「いや、これは私への注意書きとして残す」
紗英は少し笑った。
茉莉は頭を下げた。
「シールを取ったって決めつけた。ずっと謝りたかった」
「私も、意地になって話さなかったから」
「でも、悪いのは私だよ」
「そうだね」
「そこは否定してくれないんだ」
「だって、本当に何も取ってないもん」
二人とも笑った。
紗英の娘と結菜が、不思議そうに見比べている。
「大人もシールでケンカするんだね」
結菜が言った。
「昔は子どもだったの」
「今も同じ顔してるよ」
反論できなかった。
その時、茉莉のスマートフォンが鳴った。
母から写真が届いている。
『これ、あんたの昔の箱から落ちてきたけど、いる?』
写真を開く。
机の上に、小さな透明の袋が置かれていた。
中に入っているのは、月を背景に二頭のイルカが跳ねるシールだった。
「え……」
茉莉は画面を拡大した。
間違いない。
二十年前になくした、月のイルカだった。
すぐに母へ電話をかける。
「それ、どこにあったの?」
『それ、シール帳を入れてた袋の底。台紙ごと入り込んでたみたい』
茉莉は通話を切り、紗英を見る。
「袋の底にあった」
「うん」
「私が入れた袋の底に」
「うん」
「完全に私だった」
紗英は堪えきれずに吹き出した。
「二十年越しに犯人が見つかったね」
「自首します」
「時効だよ」
「シール窃盗未遂と、親友への誤認逮捕で」
「刑が重いね」
茉莉も笑った。
恥ずかしくて、申し訳なくて、それでも嬉しかった。
紗英が鞄から娘のシール帳を取り出す。
中から、小さな丸いシールを一枚剥がした。
白地に、手書きのような文字で書かれている。
『なかなおり』
「これ、交換する?」
紗英が言った。
茉莉は自分のシール帳をめくり、今日手に入れた中で一番きれいな猫のシールを差し出した。
「これと」
「レートが合わないよ」
結菜が横から指摘する。
猫はぷっくりしたキラキラシール。
『なかなおり』は、平らで小さな普通のシールだった。
茉莉は首を横へ振った。
「二十年分だから、これでも足りない」
紗英は猫のシールを受け取り、『なかなおり』を空白のページへ貼った。
『月のイルカ。ぜったいにゆるさない』
その文字のすぐ上に、丸いシールが収まった。
結菜はしばらくページを眺めていた。
「大人のシール交換って、ちょっと重いね」
「レートが二十年だからね」
帰り際、茉莉と紗英は連絡先を交換した。
紗英がスマートフォンを見ながら言う。
「今度、二人でご飯に行こう」
「子ども抜きで?」
「うん。落ち着いて話したい」
結菜と紗英の娘が、同時に顔を上げる。
「シール交換は?」
「私たちも行く!」
結局、四人で集まることになった。
その夜。
母から月のイルカを受け取った茉莉は、空白だったページへ貼ろうとした。
けれど、少し考えてやめた。
その場所には、すでに『なかなおり』がある。
月のイルカは、その隣の新しいページへ貼った。
そして下に、小さく書き足す。
『犯人、私』
翌朝。
結菜がそれを見て、真剣な顔で言った。
「このイルカ、ヴィンテージだから高いよ」
「交換しないよ」
「ぷっくりシール十枚でも?」
「しない」
「キラキラもつける」
「しないって」
「猫と、プリンと、透明なクラゲも」
茉莉はシール帳を胸へ抱えた。
大人になっても、交換できないものくらいある。
ただし、結菜がさらに金色の柴犬を差し出した時だけは、少し迷った。
小学三年生の姪、結菜にそう言われた時、二十六歳の小川茉莉は鼻で笑った。
「シールを交換するだけでしょ?」
「ただ交換するんじゃないの。レートがあるの」
「レート?」
「ぷっくりシール一枚は、普通のシール三枚。キラキラなら二枚。人気キャラは相手による」
結菜は、分厚いシール帳を机へ置いた。
ページを開くたび、動物、食べ物、宝石、海の生き物が現れる。透明なもの、振ると中の粒が動くもの、触ると柔らかいものまであった。
「今のシール、進化しすぎじゃない?」
茉莉が感心していると、結菜は得意げに胸を張った。
「今日、ショッピングモールで交換会があるの。一緒に来て」
「見てるだけならいいよ」
「茉莉ちゃんも参加するんだよ」
「私、シール持ってないけど」
結菜は、部屋の隅に置かれた古い段ボール箱を指さした。
前日に実家の物置から出てきた、茉莉の子ども時代の荷物だった。
中には、色あせた文房具、交換日記、折れた定規、そして小学生の頃に使っていたシール帳が入っている。
表紙には、銀色の文字で大きく書かれていた。
『まつりの最強シールコレクション』
「最強って……」
二十年前の自分へ言いたい。
将来、親戚の前で発掘される可能性を考えて物へ名前をつけろ、と。
結菜は目を輝かせ、古いシール帳を開いた。
「すごい! これ、今は売ってないやつだよ!」
「そんなに珍しいの?」
「ヴィンテージ!」
「シールにもヴィンテージってあるんだ」
一ページ目には、ぷっくりした果物。
二ページ目には、銀色の恐竜。
三ページ目には、香りが完全に消えた香りつきシール。
どれも懐かしかった。
ページをめくるたび、休み時間の教室が頭へ浮かぶ。
机を囲み、互いのシール帳を見せ合った。
「これ欲しい」
「それはお気に入りだから駄目」
「じゃあ、これ二枚」
「もう一枚つけて」
小学生とは思えない交渉をしていた。
「昔もレートあったよ」
茉莉が言うと、結菜は頷いた。
「シール交換は遊びじゃないから」
「そこまで言う?」
最後のページを開いた時、茉莉の手が止まった。
中央に、一枚だけ空白があった。
その周りを、青いペンで何度も囲んでいる。
下には、子どもの字でこう書かれていた。
『月のイルカ。ぜったいにゆるさない』
「何を許さなかったの?」
結菜が尋ねる。
茉莉は、ぼんやりと昔の記憶を思い出した。
月を背景に、二頭のイルカが跳ねている大きなシール。
当時、一番大切にしていた。
ところがある日、突然なくなった。
茉莉は、親友だった紗英が持っていったと思い込んだ。
その前日に、紗英が何度も交換してほしいと言っていたからだ。
「返してよ」
「取ってないよ」
「嘘つき」
ひどい言葉を言った。
紗英は泣いた。
それから二人は口をきかなくなり、仲直りできないまま、紗英は父親の転勤で引っ越した。
「私、友達を泥棒扱いしちゃったんだ」
「本当に取ったの?」
「分からない。でも、たぶん取ってない」
「どうして?」
「紗英は、そういうことをする子じゃなかったから」
大人になってから何度も思い出した。
謝りたかった。
けれど、連絡先は分からない。
名前を検索したこともあったが、同姓同名が多く、見つけられなかった。
結菜は空白のページを見つめた。
「じゃあ、今日探そう」
「何を?」
「月のイルカ」
「二十年前のシールを?」
「交換会には、すごい人が来るから」
子どもの言う「すごい人」を、茉莉はあまり信用していなかった。
ところが会場へ着くと、その考えは変わった。
モールのイベントスペースには、数十人の子どもたちが集まっていた。
テーブルの上には、色とりどりのシール帳。
保護者たちは少し離れた場所から見守っているが、子どもたちの表情は真剣だった。
「そのウサギ、交換できる?」
「これは駄目」
「じゃあ、プリンと透明なクマ」
「もう一枚」
「星ならつける」
商談だった。
会社の会議より話が早い。
結菜もすぐに輪へ入り、交渉を始めた。
茉莉は古いシール帳を抱え、近くの椅子へ座った。
参加する気はなかった。
しかし、一人の女の子が茉莉のシール帳を覗き込んだ。
「その銀色の恐竜、欲しい」
「これ?」
「この猫三枚と交換して」
差し出されたのは、毛並みまで細かく描かれた立体的な猫のシールだった。
かわいい。
かなりかわいい。
「でも恐竜一枚に、猫三枚は多くない?」
「ヴィンテージだから」
結菜と同じ言葉だった。
「じゃあ、交換成立」
十分後。
茉莉は完全に参加者になっていた。
「このクリームソーダ、交換できる?」
「キラキラの鳥なら」
「鳥一枚だけ?」
「じゃあ、小さいドーナツもつけます」
「成立」
楽しい。
想像以上に楽しい。
仕事では、予算や納期や責任がついて回る。
シール交換では、かわいいかどうかだけを真剣に考えればいい。
気づけば茉莉は、二十六歳とは思えない速度でページをめくっていた。
その時だった。
「懐かしいシール帳」
背後から女性の声がした。
振り返る。
同じくらいの年齢の女性が、小さな女の子と手をつないで立っていた。
肩までの髪。
少し垂れた目。
左の眉の上にある、小さなほくろ。
「……紗英?」
女性も目を見開いた。
「茉莉?」
二人の間に、二十年分の沈黙が落ちた。
先に口を開いたのは、紗英だった。
「まだ、そのシール帳持ってたんだ」
「うん」
「『最強シールコレクション』」
「そこは読まないで」
「表紙に大きく書いてあるから」
昔と同じ笑い方だった。
それだけで、胸の奥が苦しくなる。
茉莉はシール帳を開き、最後のページを見せた。
「紗英。あの時、ごめん」
紗英は空白と、その下の文字を見た。
『ぜったいにゆるさない』
「かなり怒ってたね」
「消しておけばよかった」
「今からでも消す?」
「いや、これは私への注意書きとして残す」
紗英は少し笑った。
茉莉は頭を下げた。
「シールを取ったって決めつけた。ずっと謝りたかった」
「私も、意地になって話さなかったから」
「でも、悪いのは私だよ」
「そうだね」
「そこは否定してくれないんだ」
「だって、本当に何も取ってないもん」
二人とも笑った。
紗英の娘と結菜が、不思議そうに見比べている。
「大人もシールでケンカするんだね」
結菜が言った。
「昔は子どもだったの」
「今も同じ顔してるよ」
反論できなかった。
その時、茉莉のスマートフォンが鳴った。
母から写真が届いている。
『これ、あんたの昔の箱から落ちてきたけど、いる?』
写真を開く。
机の上に、小さな透明の袋が置かれていた。
中に入っているのは、月を背景に二頭のイルカが跳ねるシールだった。
「え……」
茉莉は画面を拡大した。
間違いない。
二十年前になくした、月のイルカだった。
すぐに母へ電話をかける。
「それ、どこにあったの?」
『それ、シール帳を入れてた袋の底。台紙ごと入り込んでたみたい』
茉莉は通話を切り、紗英を見る。
「袋の底にあった」
「うん」
「私が入れた袋の底に」
「うん」
「完全に私だった」
紗英は堪えきれずに吹き出した。
「二十年越しに犯人が見つかったね」
「自首します」
「時効だよ」
「シール窃盗未遂と、親友への誤認逮捕で」
「刑が重いね」
茉莉も笑った。
恥ずかしくて、申し訳なくて、それでも嬉しかった。
紗英が鞄から娘のシール帳を取り出す。
中から、小さな丸いシールを一枚剥がした。
白地に、手書きのような文字で書かれている。
『なかなおり』
「これ、交換する?」
紗英が言った。
茉莉は自分のシール帳をめくり、今日手に入れた中で一番きれいな猫のシールを差し出した。
「これと」
「レートが合わないよ」
結菜が横から指摘する。
猫はぷっくりしたキラキラシール。
『なかなおり』は、平らで小さな普通のシールだった。
茉莉は首を横へ振った。
「二十年分だから、これでも足りない」
紗英は猫のシールを受け取り、『なかなおり』を空白のページへ貼った。
『月のイルカ。ぜったいにゆるさない』
その文字のすぐ上に、丸いシールが収まった。
結菜はしばらくページを眺めていた。
「大人のシール交換って、ちょっと重いね」
「レートが二十年だからね」
帰り際、茉莉と紗英は連絡先を交換した。
紗英がスマートフォンを見ながら言う。
「今度、二人でご飯に行こう」
「子ども抜きで?」
「うん。落ち着いて話したい」
結菜と紗英の娘が、同時に顔を上げる。
「シール交換は?」
「私たちも行く!」
結局、四人で集まることになった。
その夜。
母から月のイルカを受け取った茉莉は、空白だったページへ貼ろうとした。
けれど、少し考えてやめた。
その場所には、すでに『なかなおり』がある。
月のイルカは、その隣の新しいページへ貼った。
そして下に、小さく書き足す。
『犯人、私』
翌朝。
結菜がそれを見て、真剣な顔で言った。
「このイルカ、ヴィンテージだから高いよ」
「交換しないよ」
「ぷっくりシール十枚でも?」
「しない」
「キラキラもつける」
「しないって」
「猫と、プリンと、透明なクラゲも」
茉莉はシール帳を胸へ抱えた。
大人になっても、交換できないものくらいある。
ただし、結菜がさらに金色の柴犬を差し出した時だけは、少し迷った。