消えた青年

「ラズ!」
 グレンが急いで、地に落ちた青い結晶を手に抱える。彼は浮遊して行こうとしたのだが、魔法を使うことができなかった。この世からフリーエネルギーや魔力が消えたのだろうか。それは、つまりは青い結晶のフリーエネルギーによって、赤い結晶が魔法を使った事になる。
 ラズは自らの身を犠牲にして、この世界の数多の人々を救ったのだ。これでリーナの想いは叶えられたのだろうが、グレンの中には虚無感しかなかった。また、結局、好意を持てる人間を失っただけであった。
「私は結局何をしていたのだ・・・」
「貴方はスプライト。主人であるリーナさんの命に従っただけですよ。名前のプログラムより強力なね」
「黙れ! 命令などではない!」
 グレンが怒りを込めた口調で言うと、神楽が膝を地につく。
 神楽の表情は苦しそうであった。
「なるほど。貴様の身体はフリーエネルギーが動力だったか。そのものが無くなったのだな」
「まあ、そんなところです。もう時期私は死ぬでしょう。だから、最後にやるべき事がある」
 神楽はスマートフォンの様な物を床に置く。
「ここに、ある場所へのルートがある。動力源は電気だから動くはずだ。そこに、私の地球の仲間がいる。既にこのことは伝えた。貴方達は英雄として、丁重に扱われるはずです。首輪も安心してください。その動力もフリーエネルギーですから」
「何故、我々を助ける?」
「私は常に人を幸せにしたいだけです」
「戯けた事を」
 グレンが吐き捨てる様に言う。
「ただ、一番大切な人間を幸せにできなかった。彼のことを思うと悔やまれる」
 神楽はそう言うと目を瞑る。それは何か過去の事を思い起こす様な表情に思えた。

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